猛禽の宴は前作「Cの福音」を超える面白さ!舞台は日本からアメリカへ

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猛禽の宴は楡周平の本格ハードボイルド小説「Cの福音」の正当な続編になります。

ちなみにCの福音の後に2作目の「クーデター」が発売されていますが、主人公は瀬川雅彦というジャーナリストでCの福音の直接の続編ではありません。

シリーズ第3作目となる本作ではあの日本での朝倉恭介と台湾マフィアとの事件から7年後のアメリカ・ニューヨークが舞台になっています。

その間に主人公・朝倉恭介の日本でのビジネスはさらに拡大しソフィスティケートされ、ファルージオの組織力も利用して、あの頃よりもさらに確固たるビジネス基盤を築き上げていました。

警察当局にまったく気づかれずに莫大な利益を組織にもたらし続ける朝倉恭介はニューヨークの頂点に君臨する組織のボスであるファルージオから絶大な信頼を得る事に成功します。

前作の「Cの福音」が傑作だっただけに続編に対する期待値はMAXでしたが、実際に読んでみると期待以上の出来で、本屋で購入してたった1日で読み終わっちゃいました。

本当はじっくり読みたかったんですけど、あまりの面白さにどんどん作品に引き込まれてしまい気づいたら読了してました笑。

今回はそんな「猛禽の宴」を読んだ感想について書いていこうと思います。

本作の魅力は圧倒的なリアル感!

猛禽の宴の冒頭ではまずニューヨークのサウス・ブロンクスの裏路地の描写から物語がスタートします。

その描写があまりにリアルすぎて、まるで映画のワンシーンでも見ているかのようでした。

何の目的も無くショッピングカートをただ無心に押していくだけのホームレスやストリートでラップの音を道端にガンガン響かせながら仲間達とたむろする若者などニューヨークの暗部がリアルに描かれています。

しかも実はそのホームレスの正体が組織に雇われたヒットマンという予想外の展開に早く次の展開が見たいという期待感でページをめくる手が止まりませんでした。

このアメリカの闇社会の圧倒的なリアル感が楡周平のCの福音シリーズの魅力でもあります。

猛禽の宴は楡周平が現地のコーディネーターを雇って取材しているだけあって、ただの頭の中での想像や洋画を見ただけの浅い知識では決して書けない圧倒的な現実感が読み手に伝わってきます。

また本作ではニューヨークにおける組織同士の力関係も読んでいて非常に面白かったですね。

ファルージオの組織の活動拠点であるニューヨークに手段を選ばずやりたい放題のチャイニーズ・マフィアが台頭したきたせいでもはや一触即発の状態で、どの組織もかつてないほどピリピリしている様子が伝わってきます。

何かの拍子で外部から刺激が加われば、一気に均衡が崩れ全面衝突へと発展する危うさは読んでいてとてもドキドキしました。

この緊張感が終始物語の中で漂っているので、読み手としては次に何が起きるのか予測不能でかなりスリリングでしたね。

小説でここまでのスリルが味わえるなんて、たぶん楡周平のCの福音シリーズ以外にはないと思いますね。

第一作の「Cの福音」のラストシーンの朝倉恭介と台湾マフィアとの壮絶な戦いは今でも脳裏に焼き付いています。

日本の警察当局もまさか国内であんな犯罪が起きるなんて想像すらしていなかったでしょうし、捜査経験も皆無なので、事件の真相を解明するにはいくらなんでも荷が重すぎるでしょう。

案の定、猛禽の宴ではその事件が迷宮入りした事が朝倉恭介本人の口から語られます。

猛禽の宴を読んだ感想

猛禽の宴では味方のはずのフランク・コジモが組織を裏切り朝倉恭介の前に敵として立ちはだかります!

さらにコジモの悪だくみのせいで、ボスのファルージオが命を狙われた事も朝倉恭介の逆鱗にふれます。

まさか絶対的権力を持つファルージオがこんなに早く引退生活に追い込まれるとは思ってもいませんでした。

しかもブルックリンとブロンクス地区を取り仕切るフランク・コジモという組織の序列で言えば到底ボスになんてなれるはずのない小物がこのようだ大それた事をする事にも驚きましたね。

やっぱりマフィアの世界は弱肉強食で何が起きても不思議じゃないということなんでしょうね。

普通の平和な世界に生きている身としてはこんな裏の世界の抗争劇は見ている分には面白いですが、絶対に関わり合いたくないと心底思いました。

それにしてもコジモはとんだ食わせ者で、見ていてかなり腹が立ちました。

ボスのファルージオを裏切っただけじゃなく朝倉恭介が発案した日本のビジネスをただで奪い取ろうとするなんて身の程知らずもいいとこです。

大胆にもニューヨークに君臨する組織のトップの命を狙うなんて、コジモは自分がそんな器だと本気で思ってたんですかね?

案の定、真実を知った朝倉恭介の逆鱗に触れてしまい壮絶な最期を遂げることになります。

まあそれはコジモの自業自得ですが、何にしてもファルージオが現役を退くほどの大きな傷を負ってしまった事が悔やまれます。

もっと側近のヴィンセント・カルーソやジョセフ・アゴーニがしっかりしていたらこんな最悪の事態は防げたと思います。

特にアンダーボスのアゴーニの今回の失態は大きいと思います。

しかも自分まで消されてしまっては危機意識が無さ過ぎたと責められても仕方ありません。

もし朝倉恭介がいなければあのままファルージオの組織を裏切り者のアゴーニに乗っ取られてしまった可能性もあったわけですからね。

本当に組織の幹部たちには朝倉恭介が身近に居たことを感謝してほしいと思いますね。

あとラテン系マフィアのボスのパグも香港マフィアのチャンにいいように丸めこまれて、ファルージオを襲撃するなんていくら弟の敵とはいえ、もっと証拠を集めてから行動を起こすべきだったと思います。

偽の情報にまんまと踊らされて、あんな暴挙に出るなんてボスとしての資質を疑ってしまいます。

一時の感情に流されて、組織を危険に晒すなんてボスとしては言語道断だと思いますけどね。

まあ最後は朝倉恭介がしっかり後始末をしてくれたんで良かったですけど、もし真相が闇に葬り去られたままだったらと思うとぞっとします。

コジモの裏切りに朝倉恭介が怒りの鉄槌

猛禽の宴ではブロンクス地区を統括するフランク・コジモが組織への忠誠を忘れて私利私欲で暴走します。

ニューヨークで頂点に君臨するマフィア組織のボスのファルージオを引退に追い込んだだけじゃなく、自分のビジネスも危険にさらすコジモにブチギレた朝倉恭介が怒りの鉄槌を下します!

思いかえせば初対面から朝倉恭介とコジモの出会いは最悪でした。

朝倉恭介が初対面で握手した際に生理的に合わないと感じるのも当然だと思います。

今思いかえしてもコジモは本当に狡賢い奴で、こんな男の手下には絶対になりたくないと思いましたね。

コジモは典型的な自分のことしか考えない自己中野郎で見ているだけでイライラしてきます。

初対面で朝倉恭介をまるで値踏みするようなコジモのずうずうしい態度には読んでいてとてもフラストレーションがたまりましたね。

自分が朝倉と格が違うということを後に思い知る事になろうとはこの時のコジモは想像すらしていなかったでしょう。

初対面にも関わらずいきなりボスの権力を振りかざして日本のビジネスの10%の利益で我慢しろと朝倉に半ば強要するコジモの横柄な態度には辟易しました。

何にもしてない奴が9割の利益をネコババするなんてどこの世界でそんな事がまかり通るのか教えてほしいくらですね。

しかし当然、首を縦に振らない朝倉恭介に対して恐怖で言う事を聞かせいようとしたのが運のつきで、コジモがボスになった秘密を知られてしまうという決定的なミスを犯します。

コジモの卑劣な裏切り行為を知った朝倉恭介は怒りに燃え持てるすべての力とコネを使ってコジモを叩き潰そうと決意します。

それにしても朝倉がまさか戦闘ヘリのコブラまで持ち出してくるとは思いませんでしたね。

元軍人のギャレットと知り合いだったのも朝倉恭介にとっては幸運でしたね。

なんせコブラを飛ばせる人間がいなければ今回の作戦は実行することすら不可能でしたからね。

でもさすがに朝倉恭介がギャレットに5千万という大金を支払った事は驚きでした。

まあ日本でのビジネスが大成功しているので恭介にとってハーフミリオンという金額は取るに足らない額なのかもしれないですけどね。

そしてトドメはコブラの機体まで飛べる状態で準備するなんて朝倉恭介はどんだけ凄いんだよと思いました。

ここまでくるともう結末を見るまでもなく勝負は決まったようなもんだと正直思いましたね。

知性と力を併せ持つ存在の朝倉恭介に力のみでここまでのし上がってきたコジモが敵うはずがないのはもはや明白です。

そして予想した展開通り、朝倉恭介は見事にファルージオの敵を討ちます。

タイトル通りのインパクト

本作は猛禽の宴というタイトルから分かる通り、主人公の朝倉恭介がアメリカを舞台に大暴れする内容になっています。

猛禽の宴は「Cの福音」の正当な続編で、前作よりもはるかにパワーアップした朝倉恭介のアクションが見どころです。

本作では組織からブロンクス地区を任されているフランク・コジモから受けた屈辱が朝倉恭介の怒りに火をつけます!

物語のラストではコジモがファルージオを嵌めてボスの地位に昇りつめた裏の真相を知った朝倉恭介がファルージオの敵を討つために実力行使に出ます。

こうなったら誰も朝倉恭介を止めることはできません。

能ある鷹は爪を隠すとはよく言ったものです。

まさしく朝倉恭介はこのことわざにぴったりの人間でしたね。

ボスのファルージオから全幅の信頼を受けているのも頷けます。

アクションが面白過ぎて終盤にかけてどんどん引き込まれていきました。

これほどの一級エンターテイメント小説が描けるのは楡周平の他には数えるほどしかいないと思いますね。

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