楡周平のハードボイルド小説「Cの福音」を読んだ感想は圧巻の一言!

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Cの福音は1996年に発売された楡周平のデビュー作で記念すべき「Cの福音」シリーズ第一作となります。

Cの福音は全6作品の長編シリーズとなっておりヘタなアクション映画を見るよりよっぽど面白いと思います。

内容はゴリゴリのハードボイルド小説で、デビュー作とは思えないクオリティの高さで読み手の知的好奇心を思う存分に満たしてくれます。

本書に登場するアンチヒーローの主人公の朝倉恭介がとにかくカッコ良すぎて、男に生まれたら朝倉恭介のようになりたいと思った読者も多かったんじゃないでしょうか。

今回はそんな一級エンタメ小説のCの福音を読んだ感想について書いていきます。

究極のハードボイルド小説

Cの福音を一言で表すとニューヨークの裏社会で暗躍する組織同士の抗争を描いた究極のハードボイルド小説です。

そこに日本人の朝倉恭介という一見すると裏の組織の人間たちとは全く何の繋がりも無い異端者が深く関わってくる事で本作をかつてない極上のクライム・サスペンス小説へと昇華しています!

正義とは対極に存在する闇の世界の住人である主人公の朝倉恭介がとにかくカッコいいんですよね。

男の僕でも惚れてしまうほどの優秀さと冷徹さを兼ね備えたまさに裏の世界で生きる為に生れてきたような男です。

Cの福音の中で描かれる朝倉恭介は所作の一つ一つがとにかく洗練されていて、まるで任務を遂行するマシーンのような冷静さと行動力を併せ持つ無敵のヒーローといった印象です。

どんな任務も完璧にこなす主人公の姿はまさにパーフェクトヒューマンで一分の隙もありません。

こんなに優秀ならどの世界でも成功は約束されていると思います!

天から与えられた類まれな才能と危険を瞬時に察知する鋭い嗅覚で、どんなピンチも切り抜け朝倉恭介はマフィアの世界でのし上がっていきます。

僕はあまりにこの小説が好き過ぎて今まで何度読みかえしたか分かりません笑。

それほど楡周平の「Cの福音」は僕にとっては大好きな作品のひとつですね。

Cの福音のあらすじ紹介

アメリカで大学生活を送っていた主人公の朝倉恭介は親友の父親がマフィアのボスだった影響もあり、ある不幸な出来事をきっかけに悪の道に突き進むことになります。

そしてほどなくしてたった一人で日本をマーケットにした莫大な収益を生むビジネスを完成させることに成功します。

朝倉恭介の組織への高い貢献度を評価したマフィアのボスのファルージオはいつか主人公を自分の跡取りにしたいという思いを胸に抱くようになります。

しかし順調だった朝倉恭介のビジネスがほんの些細なミスで、日本市場で先に商売を始めていた台湾のライバル組織にその存在を気づかれてしまい、邪魔な存在として目をつけられてしまいます。

自分たちのシマを荒らされて激昂したライバル組織のボスは朝倉恭介のブツの流通網を乗っ取り、彼のビジネスを丸ごと自分たちの手中に収めようと画策しますが、朝倉は持てる力と聡明な頭脳をフル回転して見事に敵の組織を返り討ちにします!

この主人公と台湾マフィアとの終盤の対決シーンはかなり見応えがあり、面白かったですね。

映画顔負けのド派手なアクションを日本で繰り広げる朝倉恭介のダークヒーローぶりに惚れぼれしちゃいました笑。

たった一人でライバル組織を壊滅させた朝倉恭介の圧倒的な強さを見てますます彼の事を応援したい気持ちになりました。

朝倉恭介はただ強いだけでなくビジネスの才能もあって頭も切れます。

劇中でたった一人で莫大な利益を上げる非合法ビジネスを誰にもバレずに長期にわたって取り仕切ってきた彼の才覚には驚かされます。

これほどの完璧な密輸入のスキームをゼロから構築した朝倉恭介にはまさに天才という言葉が相応しいでしょう。

そして朝倉恭介はこの利益を組織への上納金として徐々に組織での存在感を強めていきます。

組織のボスのファルージオも主人公の朝倉恭介には全幅の信頼を寄せていて、時折無くなった息子と朝倉恭介を重ね合わせるくらい深い愛情を感じています。

朝倉恭介は完全な悪人ですが、なぜか応援したくなっちゃう不思議な魅力を持っています。

ファルージオが主人公に肩入れする気持ちも分かります。

それは単に朝倉恭介が亡くなった息子の親友だったことだけによるものではないことは彼の有能さを見れば一目瞭然です。

劇中で主人公の朝倉恭介はピンチに陥るたびにとっさの機転と高度な戦闘スキルで、解決不可能とも思える難局をいとも簡単に乗り越えていく姿はまさに男の憧れの姿でしたね。

さらに運をも味方につけた無敵とも思える主人公の姿は読み手をあっという間に魅了してしまいます。

完全無欠の主人公「朝倉恭介」

Cの福音では主人公の朝倉恭介がニューヨークの裏社会に絶対的権力で君臨するファルージオに見込まれて悪の道にどんどん染まっていく姿が描かれます。

今まで小説と言えば宮部みゆきの理由や村上春樹の海辺のカフカなど国内が舞台の作品ばかりだったので、Cの福音のような世界を股にかけるアクション小説は読んでいて新鮮な感じでた。

Cの福音を読むまでは映画じゃなくてもこんなにアクションが見応えのある小説があるなんて思いもしませんでしたね。

どんなに難しいビジネスも成功させて、主人公の朝倉恭介が組織の中でどんどんその存在感を高めていく姿はとても見ごたえがありました。

こんなに何もかもうまくいくなら自分が神にでもなった気分になる主人公の気持ちも分かります。

シリーズの続編では朝倉恭介はその戦闘スキルを買われてCIAにもリクルートされちゃいます 笑。

そのせいで些細なミスが命取りになる二重スパイとして生きるハメになりますが、朝倉恭介はそんな逆境すらバネにしてさらなる高みを目指します。

マフィアと政府当局の2重の圧力をもろともせずに、強靭な精神力で生き抜く朝倉恭介の姿はまさに脱帽でしたね

自分だったらとてもプレッシャーに耐えられる自信がありません笑。

でも優秀であるがゆえに心の中に生じたほんのわずかな奢りが最後の最後で自分の足元をすくう事になるとはこの時の朝倉恭介は夢にも思ってないでしょうね。

いずれにしても「Cの福音」の朝倉恭介は最初から最後まで優秀な姿が楡周平によって描かれます。

Cの福音の総評

まさか日本でこんな闇のビジネスを取り仕切る主人公のような人間がいるなんて普通に日常生活を送っていたら20年前にはとても考えつかないシナリオです。

そもそも違法薬物に対してこれほどの知見を持っている著者のような人間が日本にどれほどいるでしょうか?

そういう意味でCの福音は楡周平のような圧倒的な取材力とそれを形にする文章力が無ければ絶対に描けない極上のクライム・サスペンス小説だと思います。

確かに内容は20年前の知識によって描かれているので、パソコンの描写などは特にいま読むと古いなと感じてしまいますが、発売当初の時代背景を考えるとその当時としてはかなり先進的な内容だったと思います。

外資系企業で働くことで培われた著者の豊かな国際感覚があればこそ描けるストーリーだと思います。

Cの福音を一言で表すとまさに極上のクライム・サスペンス小説です。

20年以上も前の小説とは思えない、楡周平の圧倒的なセンスが光る作品です。

この手の小説で発行部数が30万部を超えたのは異例だと思いますね。

デビュー作のCの福音のヒットがきっかけで楡周平は一躍人気小説家の仲間入りを果たします。

Cの福音を読んだのがきっかけで再生巨流やフェイク、無限連鎖など楡周平の人気作をとにかく読みあさりましたね。

そしてそのどれもが面白かったです。

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